狂犬病ワクチン − 狂犬病の発生状況や狂犬病ワクチンの予防接種についてのご案内

狂犬病ワクチン [Rabies]

狂犬病

狂犬病ワクチン[Rabies]の発生状況

狂犬病発生状況

日本、ニュージーランド、英国、スカンジナビア半島の国々などの一部の地域を除いて世界中に存在します。特にインド・ネパール・東南アジア諸国・中南米諸国・アフリカ諸国へ旅行される方は接種をお勧めします。

狂犬病のワクチン接種をお勧めする方 暴露前接種の選択の指針(米国疾病対策センター)

1.哺乳動物の研究・捕獲。動物と直接接触する機会が多くなる長期滞在予定の方。

2.都市部から遠く離れ、緊急対応ができない地方部に滞在する方。

3.狂犬病の流行する地域で1ヶ月以上滞在する方。

★海外で哺乳動物(犬、猫、猿、スカンク、アライグマ、フェレット、コウモリなど)に咬まれたり引っ掻かれた場合には、狂犬病ウイルスの感染を疑う必要があります。ウイルスはこれら哺乳動物の唾液や分泌物に含まれています。
このウイルスは健康な皮膚(角質層で守られている)からは侵入できませんが、眼や鼻、口唇等の粘膜からは侵入します。
このウイルスは血液には入らずに神経に沿って脳神経に向かいます。従って、咬傷後にウイルスに感染しているのか 血液検査では診断ができません。感染したものとして対応します。このウイルスが体内で増殖すると現在の医学では治療ができません。

 

  • 感染した哺乳動物の唾液や分泌物の中に狂犬病ウイルスはいます(bite or scratch)。
  • 海外では繋がれていない犬、猫やサルにご注意下さい。
  • 奥地、秘境、洞窟探検などの冒険旅行が目的の方は接種をお勧めします。

狂犬病の感染原因と症状

感染

感染した動物に咬まれることで感染します。唾液のついた爪で引っ掻かれても感染の危険があります。狂犬病を発症すると現在の医学では治療法がなく、ほぼ100%が死亡する怖い病気です。

症状

狂犬病のウイルスに感染した犬、猫、キツネ、アライグマ、コウモリなどの哺乳類動物に接触することで感染します。

アメリカ − アライグマ・コウモリ・スカンク
ヨーロッパ − キツネ
アフリカ − ジャッカルやマングースが有名。

潜伏期間は通常20〜60日程度です。発病するかどうかは咬まれた傷口の位置、大きさやウイルスの量で大きく変わります。主な症状は、発熱、頭痛、全身の倦怠感、嘔吐、噛まれた傷口が傷む、液体を飲むと痙攣を起こす、落ち着きのなさ、興奮しやすい、筋肉の痙攣など。狂犬病にかかった犬の症状は、一般的に狂躁時と麻痺時に分けられますので、おとなしいからといって安全とは限りません。

狂犬病を予防するには

予防接種を受けるのが一番の予防法です。
また、飼われている犬でも、舐められたりされないよう注意することです(皮膚の角質層が傷んでいると、ウイルスは侵入します)。

狂犬病ワクチンの種類

世界には多くの種類の狂犬病ワクチンが存在します。海外で接種する場合にはワクチン名も確認しましょう。
特にアジア、アフリカ、南米の一部の限られた発展途上国では感染動物脳組織由来(Nerve tissue vaccines)ワクチンを未だに使用している場合があります。これらのワクチンは抗体価が低いため接種をしても狂犬病にかかるリスクを含む重篤な副反応を引き起こす可能性がありますので使用は避けてください。

ワクチン種類 ワクチン名 培養基 主な使用地域
感染動物脳組織由来
Nerve tissue vaccines
*WHOは使用を避けるよう勧告*
センプル型ワクチン(Semple) ヒツジ、ヤギ、ウサギ アジア、アフリカ
フェンザリダ型ワクチン(Fuenzalida) 乳のみマウス 南米
トリ発育胚ワクチン 精製アヒル胎児ワクチン(PDEV) アヒル胚 ヨーロッパ
組織培養ワクチン
(互換性有)
ヒト2倍体細胞ワクチン(HDCV) ヒト培養線維芽細胞 北米、ヨーロッパ
精製ニワトリ胚細胞ワクチン(PCECV) ニワトリ胚細胞 北米、ヨーロッパ、日本、世界各国
精製ベロ細胞ワクチン(PVRV) ベロ細胞 ヨーロッパ、世界各国
吸着型ワクチン(RVA) 胎児アカゲザル細胞 北米
ハムスター腎細胞ワクチン(PHKCV) ハムスター腎細胞 中国、アジア

狂犬病流行地で動物に咬まれたら(暴露後接種)

  • 傷を石鹸と流水で15分以上洗う。止血はしない。ポピドンヨードで消毒(イソジン)
  • 咬傷後24時間以内の処置(下記)が必要

【備考】咬傷後の場合には、生命に係わる感染症であるので大人も子供でも、咬傷後のワクチン接種をお受けください。
尚、犬などの小動物は、10日ほどで死亡します。咬んだ犬が10日以上生存していれば、狂犬病ウイルスに感染していないと判断されます。

事前に予防接種を受けていない人(暴露前接種を受けていない)

  • 咬まれた場合には24時間以内にヒト抗狂犬病免疫グロブリンHRIG)の咬傷部位への局所注射と細胞培養の狂犬病ワクチンの接種が必要です。
  • 咬傷部の消毒・手当て(破傷風ワクチン、抗生剤)
  • 侵入したかもしれないウイルスを拡散させないために、ヒト抗狂犬病免疫グロブリンHRIG)(健康な人で作った狂犬病ウイルスの抗体)を咬傷部に注射します(このグロブリンは高価であり、入手できる国は限られています)。
  • 狂犬病ワクチンは5回接種します(0日、3日、7日、14日、28日)。
    WHOでは、旅行者が移動しやすいように最初の日に2回分の接種(0日と3日を一緒にする)をする方法も勧めています。

事前に予防接種を受けている人(暴露前接種を受けている)

  • 3回の接種(0日、7日、21〜28日)で、3年間の免疫が持続します。
  • この3年間のうちに、海外で咬まれた場合には、念のために2回の追加接種(0日、3日)をします。
  • 抗体ができているのでヒト抗狂犬病免疫グロブリンHRIG)の注射は必要ありません。

WHO分類

狂犬病ウイルスに感染している疑いのある動物(稀に野生のネズミ類、家畜や野生のウサギも対象となる)、あるいは狂犬病であることがはっきりしている動物との接触があった場合に、WHOではヒトに対して推奨される対処方法を3つのカテゴリーに分けて示しています。

カテゴリ 狂犬病が疑われる動物との接触 暴露後処置
I 触ったり、餌をあげたりした際に正常な皮膚の上を舐められた 不要
II 僅かに皮膚をかじられた場合や、出血を伴わない引っ掻き傷や浅い擦りむき傷、傷のある皮膚を舐められた場合 緊急ワクチン接種
傷の手当
III 1か所以上の皮膚を貫通した咬み傷やひっかき傷
損傷を受けた皮膚を舐められた
舐められたことで唾液と粘膜(眼、口、唇、鼻)が接触
コウモリとの接触
緊急ワクチン接種
抗狂犬病ウイルス免疫グロブリンRIG)投与
傷の手当
  • WHOでは暴露後接種初回時にRIGの投与を創傷部位付近及び筋肉内に行うことを推奨しています。
    (その場に免疫グロブリン(RIG)が無い場合は、7日以内に免疫グロブリン(RIG)を投与する。)

しかしながら、RIGは世界的に供給不足であり、日本には通常RIG自体ありません。狂犬病動物に咬まれた可能性がある場合は、必ず、現地の首都圏の大きな病院を受診して加療を受けてから帰国してください。

※加害動物(イヌ又はネコ)を10日間観察し健康であれば、又は加害動物を安楽死させ適切な方法で検査して狂犬病陰性と判定されれば治療を中止する。

世界の暴露後接種スケジュール

暴露前の接種歴 暴露後の接種方法 ワクチン接種日スケジュール
なし 日本法 0, 3, 7, 14, 28, 90日
WHO/Essen法(世界標準) 0, 3, 7, 14 ,28日( +0日 HRIG)
Zagreb法(世界標準) 0(初日に左右の腕に1本ずつ計2本接種), 7, 21日
( +0日 HRIG)
タイ赤十字皮内接種法(TRC-ID法) 0(2), 3(2), 7(2), 28(1), 90(1)
*筋肉内投与量(1ml)の0.2mlを2か所に接種
Oxford法 0(8), 7(4), 28(1), 90(1)
*筋肉内投与量(1ml)の0.1mlを8カ所に接種。(RIGを接種出来ない場合に推奨)
あり 輸入ワクチン使用 WHO法 0, 3日
国産ワクチン使用 日本法 暴露前接種完了後6ヶ月以内・・メーカーは不要??、厚生省は0, 3日??
暴露前接種完了後6ヶ月以上経過・・0, 3, 7, 14, 28, 90日
  • 抗狂犬病ヒト免疫グロブリン(HRIG)の投与量は20 IU/kg (ex 体重50Kg→20IU×50Kg=1000IUを投与)

抗狂犬病ウイルス免疫グロブリン(RIG) について

WHOでは暴露後、ワクチン接種前に可及的速やかにRIGの投与を創傷部位とその付近および筋肉内に行うことを推奨しています。その場に免疫グロブリンが無い場合は、7日以内に免疫グロブリンを投与します。

しかし、実際はRIGは世界的に供給不足であり、ほとんどの患者はRIGの投与なくワクチン治療を受けている(省略している)のが現状です。日本は狂犬病フリー国ですので、RIGは製造を行っておらず、通常は入手できません。人の血液を採取して、そこから抗体を分離した血液製剤であり、大量生産はできず品薄で高価です。

そのため、狂犬病動物に咬まれた可能性がある場合は、必ず、現地の首都圏の大きな病院を受診して加療を受けてから帰国してください。

RIGはヒト血清由来の製品ですが、途上国で供給されるRIGはウマ血清由来であることもあります。ウマ由来のRIGの投与は血清病の重大なリスクとなります。

1.2mlあたりおよそ300ドルで、6本投与されます。

最在国内にRIGがない場合は、隣国に緊急搬送して投与することになります。(この費用はカード付帯の旅行傷害保険では適応され無いことが多く、専用の海外旅行傷害保険に入っておく必要があります。)

当クリニック取り扱い狂犬病ワクチン

狂犬病ワクチンは、日本国内で生産している狂犬病ワクチンと、海外で生産されている狂犬病ワクチンがあります。

【重要事項】当院では、欧米各国で広く承認されている“Rabipur”、“VERORAB”を輸入しております。“Rabipur”、“VERORAB”は、現在日本では製造されておりません。厚生労働省の承認もありません。輸入ワクチン製剤を利用して副反応が生じた場合は、医薬品副作用被害者救済制度が利用できない可能性がありますので、ご注意ください。

※輸入ワクチンのため国内のワクチン救済制度は利用できませんが、輸入業者による輸入ワクチン副作用被害救済制度が設けられています。当クリニックはこの制度を導入している業者からのみ輸入しております。

ワクチンの種類 狂犬病 狂犬病 狂犬病
  狂犬病ワクチン 国産 狂犬病 輸入ワクチンRabipur Novartis社、Chiron社 狂犬病 輸入ワクチン VERORAB Sanofi Pasteur社
商品名 乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン Rabipur VERORAB
生産 国産 輸入 輸入
販売元 化血研 Glaxo Smith Kline社 (2015年までNovartis社)
Chiron社
Sanofi Pasteur社
基礎接種回数** 3回
(0、4週間、6-12ヶ月)
3回
(0、1週間、3-4週間)
3回
(0、1週間、3-4週間)
基礎接種後の
抗体価持続期間
2年(?) 2年 2年
*長期の免疫維持を必要とする方は、基礎接種の3回接種後、 1年後に1回追加接種を
すると5年の免疫維持。 (ハイリスク者は2年毎の追加接種又は抗体検査)
軽度の副反応* 軽症の局所の痛み、紅斑、腫脹及び掻痒、時に全身反応(不快感、全身性の痛みと頭痛)
重篤な副反応* アレルギー反応(アナフィラキシー症状等)頻度;極めて稀
接種禁忌者* ゼラチンやワクチンに対する重度のアレルギーがある人など ゼラチン、卵白、アンホテリシンB、クロルテトラサイクリン、ネオマイシンのアレルギーがある人 人アルブミン、ネオマイシン、ストレプトマイシンのアレルギーがある人

*)掲載内容は全てではありません。
**)3回目の接種時期は、初回日から計算した日数です。  

出発までに十分な時間がない場合

輸入の狂犬病ワクチンを3回接種する

国産の狂犬病ワクチンは出発まで期間が6ヶ月以上あり、3回接種できる方に勧めます。

狂犬病ワクチンのよくある質問

バリに観光旅行を予定していますが、狂犬病ワクチンを接種するか考えています。
インドネシアのバリ島は狂犬病発生率が非常に高いです。ですので、旅行者の方でも狂犬病の予防接種をしてからご出発されることをお勧めいたします。バリ島の狂犬病発生についての情報はこちらをご覧下さい。
中国で犬に噛まれました。現地で暴露後の接種を3回した後、日本に帰国しました。残りの暴露後接種をしていただけるところを探しています。
暴露後の接種は0,3,7,14,30日の間隔で、5回の狂犬病ワクチンを接種します。ご予約の際には暴露後の接種で3回まで接種完了であることと、次回の接種予定日をお知らせの上、ご予約下さい。 0日は、暴露後の狂犬病ワクチンを最初に接種した日です。
*0日目に2Dose筋肉内注射し、その後7、21日目に接種する方法(Zagreb法)も推奨されています。
狂犬病ワクチンの種類について詳しく教えてください。
日本では、ヒト用ワクチンは乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチンとして化学及血清療法研究所で製造されています。このワクチンはニワトリ胚初代培養細胞を用いたワクチンです。
世界で利用されているワクチンは脳組織由来ワクチンと培養細胞由来ワクチンの2種類がありますが、前者の神経組織(脳)で作ったものは効果が弱く副作用が多いため、使用を避けるよう勧告されていますが、発展途上国などでは未だに使われているケースもありますので注意して下さい。後者のワクチンが安全で主流となっています。 代表的なものとして、ニワトリ胚初代培養細胞を利用したChiron Behring社のRabipur、Vero細胞を利用したSanofi Pasteur社のVERORAB、ヒト2倍体細胞を利用したRabivacなどがあります。

トラベルクリニックとして

日本で生活する上では気にすることのない感染症。しかし、上・下水道施設が整備されて、非常に衛生的できれいな日本にはない感染症が世界にはたくさんあります。日本国内にはない感染症ですから、その感染症に対して無防備な状態で現地に飛び込んでしまったら、どうなるでしょう?感染症には軽症ですむものから重症化し入院や時にはあなたの命にまで危険が及ぶ怖い感染症もあります。健康である方も感染症にはかかります。

ワクチン接種を行うことによって、体の中に抗体(免疫)を付けてから現地に赴くことやワクチン開発のない(または開発中の)感染症からどのように身を守るかが大変重要です。

海外生活をより楽しくそして安全に過ごしていただくために、品川イーストクリニックではトラベル外来を実施しております。

海外で行われている予防医学学会へ積極的に出席することで、海外の医師との意見交流を行い、お越し頂く患者様へ的確なアドバイスを行っております。ご自身の身を守ることはもちろん、周囲への二次的感染予防としても、海外へご出発される前にしっかりと知識を見につけ、可能な限りの予防対策を行い、安全で楽しい滞在を願っております。

当クリニックでは、コンシェルジュ(看護師)によるカウンセリングや感染症専門医師による診察を行っております。