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更新日 January 18, 2023
目次
狂犬病は、人間での日本国内感染の症例は1956年が最後で、動物での感染報告も1957年以降報告されていませんので、日本は狂犬病フリー国です。しかし、世界各地では広く流行しており、発症すると100%死亡する治療法のない病気です。2006年にはフィリピンより帰国した男性が、現地で狂犬病ウイルスに感染した犬に手を咬まれ狂犬病に感染し、日本国内で発症した輸入症例が2例報告されています。WHOは年間55,000人が狂犬病で死亡しており、その56%がアジア諸国で発生していると報告しています。感染リスク地域へ行かれる際は狂犬病ワクチンを事前に接種(暴露前接種)し、野犬や動物との接触しないよう心がけてください。狂犬病ワクチンは国内外に多くのワクチン製剤が流通しています。海外渡航先でワクチン接種をする際にも注意する点がありますので、正しい知識を持ってご自身の安全を守りましょう。
日本、ニュージーランド、英国、スカンジナビア半島の国々などの一部の地域を除いて世界中に存在します。特にインド・ネパール・東南アジア諸国・中南米諸国・アフリカ諸国へ旅行される方は接種をお勧めします。
狂犬病ウイルスは人間や犬だけでなく、全ての哺乳類に感染します。狂犬病ウイルスはアルコール消毒、石鹸で手を洗う、乾燥や熱で容易に死滅します。しかし、一旦傷口などから体内にウイルスが侵入すると、1日に数〜数十mmの速さで神経系を通って脳に向かって進み、発症すると治療法がなく100%死亡します。潜伏期間は傷口の深さ(ウイルスが入った量)、脳から離れている足なのか、脳に近い手や腕なのか、成人か子供かなどにも異なります。甘噛み程度でも皮膚に傷があればウイルスは侵入しますので、特に小さなお子さまには注意が必要です。発症するまでほとんど自覚症状がなく、多くの場合、潜伏期間は1〜3か月と言われています。早ければ数日、長い場合は1年以上にもなります。
咬傷前に狂犬病ワクチンを接種することを「暴露前予防=pre-exposure prophylaxis: PrEP」と言い、咬傷後に狂犬病ワクチンを接種することを「暴露後予防=post-exposure prophylaxis: PEP」と言います。
暴露前接種をしているかしていないかで、暴露後接種の回数や処置が異なります。特に、暴露前接種をしていないで、海外で咬傷後に接種が必要となった場合に推奨されている抗狂犬病免疫グロブリンは、国内で製造・販売されていないため入手困難であり、「WHO推奨の国際的な暴露後免疫」は実施できません。
海外で犬や動物に咬まれた際は、速やかに現地の病院を受診することが大切です。
1.哺乳動物の研究・捕獲。動物と直接接触する機会が多くなる長期滞在予定の方。
2.都市部から遠く離れ、緊急対応ができない地方部に滞在する方。
3.狂犬病の流行する地域で1ヶ月以上滞在する方。
★海外で哺乳動物(犬、猫、猿、スカンク、アライグマ、フェレット、コウモリなど)に咬まれたり引っ掻かれた場合には、狂犬病ウイルスの感染を疑う必要があります。ウイルスはこれら哺乳動物の唾液や分泌物に含まれています。
このウイルスは健康な皮膚(角質層で守られている)からは侵入できませんが、眼や鼻、口唇等の粘膜からは侵入します。
このウイルスは血液には入らずに神経に沿って脳神経に向かいます。従って、咬傷後にウイルスに感染しているのか 血液検査では診断ができません。感染したものとして対応します。このウイルスが体内で増殖すると現在の医学では治療ができません。
感染した動物に咬まれることで感染します。唾液のついた爪で引っ掻かれても感染の危険があります。狂犬病を発症すると現在の医学では治療法がなく、ほぼ100%が死亡する怖い病気です。
狂犬病のウイルスに感染した犬、猫、キツネ、アライグマ、コウモリなどの哺乳類動物に接触することで感染します。
アメリカ − アライグマ・コウモリ・スカンク・コヨーテ・キツネ
南米 − マングース・コウモリ・イヌ
アジア − イヌ・サル
南太平洋 − コウモリ
中東 − イヌ・オオカミ・キツネ
ヨーロッパ − キツネ・コウモリ
アフリカ − コウモリ・マングース・イヌ・キツネ・ジャッカルが有名。
潜伏期間は通常20〜60日程度です。発病するかどうかは咬まれた傷口の位置、大きさやウイルスの量で大きく変わります。主な症状は、発熱、頭痛、全身の倦怠感、嘔吐、噛まれた傷口が傷む、液体を飲むと痙攣を起こす、落ち着きのなさ、興奮しやすい、筋肉の痙攣など。狂犬病にかかった犬の症状は、一般的に狂躁時と麻痺時に分けられますので、おとなしいからといって安全とは限りません。
予防接種を受けるのが一番の予防法です。
また、飼われている犬でも、舐められたりされないよう注意することです(皮膚の角質層が傷んでいると、ウイルスは侵入します)。
世界には多くの種類の狂犬病ワクチンが存在します。海外で接種する場合にはワクチン名も確認しましょう。
特にアジア、アフリカ、南米の一部の限られた発展途上国では感染動物脳組織由来(Nerve tissue vaccines)ワクチンを未だに使用している場合があります。これらのワクチンは抗体価が低いため接種をしても狂犬病にかかるリスクを含む重篤な副反応を引き起こす可能性がありますので使用は避けてください。
ワクチン種類 | ワクチン名 | 培養基 | 主な使用地域 |
感染動物脳組織由来 Nerve tissue vaccines *WHOは使用を避けるよう勧告* |
センプル型ワクチン(Semple) | ヒツジ、ヤギ、ウサギ | アジア、アフリカ |
フェンザリダ型ワクチン(Fuenzalida) | 乳のみマウス | 南米 | |
トリ発育胚ワクチン | 精製アヒル胎児ワクチン(PDEV) | アヒル胚 | ヨーロッパ |
組織培養ワクチン | ヒト2倍体細胞ワクチン(HDCV) | ヒト培養線維芽細胞 | 北米、ヨーロッパ |
精製ニワトリ胚細胞ワクチン(PCECV) | ニワトリ胚細胞 | 北米、ヨーロッパ、日本、世界各国 | |
精製ベロ細胞ワクチン(PVRV) | ベロ細胞 | ヨーロッパ、世界各国 | |
吸着型ワクチン(RVA) | 胎児アカゲザル細胞 | 北米 | |
ハムスター腎細胞ワクチン(PHKCV) | ハムスター腎細胞 | 中国、アジア |
【備考】咬傷後の場合には、生命に係わる感染症であるので大人も子供でも、咬傷後のワクチン接種をお受けください。
尚、犬などの小動物は、10日ほどで死亡します。咬んだ犬が10日以上生存していれば、狂犬病ウイルスに感染していないと判断されます。
咬まれた日(0日) | 自分で出来ること: 医療機関ですること: ※狂犬病ガンマグロブリンの接種とは・・ |
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WHO推奨の代表的な接種間隔と回数 | 0、3、7、14、28日 | 0、7、21日 |
咬まれた日(0日) | 狂犬病ワクチン1回目1本接種 | 狂犬病ワクチン2本接種 片腕ずつに1本ずつ同時に接種する |
3日後 | 狂犬病ワクチン2回目1本接種 |
なし |
7日後 | 狂犬病ワクチン3回目1本接種 | 狂犬病ワクチン2回目1本接種 |
14日後 | 狂犬病ワクチン4回目1本接種 | なし |
21日後 | なし | 狂犬病ワクチン3回目1本接種 |
28日後 | 狂犬病ワクチン5回目1本接種 | なし |
暴露前の接種歴 | 暴露後の接種方法 | ワクチン接種日スケジュール |
なし | 日本法 | 0, 3, 7, 14, 28, 90日 |
WHO/Essen法(世界標準) | 0, 3, 7, 14 ,28日( +0日 HRIG) | |
Zagreb法(世界標準) | 0(初日に左右の腕に1本ずつ計2本接種), 7, 21日 ( +0日 HRIG) |
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タイ赤十字皮内接種法(TRC-ID法) | 0(2), 3(2), 7(2), 28(1), 90(1) *筋肉内投与量(1ml)の0.2mlを2か所に接種 |
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Oxford法 | 0(8), 7(4), 28(1), 90(1) *筋肉内投与量(1ml)の0.1mlを8カ所に接種。(RIGを接種出来ない場合に推奨) |
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あり | WHO法 | 0, 3日 |
狂犬病ウイルスに感染している疑いのある動物(稀に野生のネズミ類、家畜や野生のウサギも対象となる)、あるいは狂犬病であることがはっきりしている動物との接触があった場合に、WHOではヒトに対して推奨される対処方法を3つのカテゴリーに分けて示しています。
カテゴリ | 狂犬病が疑われる動物との接触 | 暴露後処置 |
I | 触ったり、餌をあげたりした際に正常な皮膚の上を舐められた | 不要 |
II | 僅かに皮膚をかじられた場合や、出血を伴わない引っ掻き傷や浅い擦りむき傷、傷のある皮膚を舐められた場合 | 緊急ワクチン接種 傷の手当 |
III | 1か所以上の皮膚を貫通した咬み傷やひっかき傷 損傷を受けた皮膚を舐められた 舐められたことで唾液と粘膜(眼、口、唇、鼻)が接触 コウモリとの接触 |
緊急ワクチン接種 抗狂犬病ウイルス免疫グロブリン(RIG)投与 傷の手当 |
しかしながら、RIGは世界的に供給不足であり、日本には通常RIG自体ありません。狂犬病動物に咬まれた可能性がある場合は、必ず、現地の首都圏の大きな病院を受診して加療を受けてから帰国してください。
※加害動物(イヌ又はネコ)を10日間観察し健康であれば、又は加害動物を安楽死させ適切な方法で検査して狂犬病陰性と判定されれば治療を中止する。
WHOでは暴露後、ワクチン接種前に可及的速やかにRIGの投与を創傷部位とその付近および筋肉内に行うことを推奨しています。その場に免疫グロブリンが無い場合は、7日以内に免疫グロブリンを投与します。
しかし、実際はRIGは世界的に供給不足であり、ほとんどの患者はRIGの投与なくワクチン治療を受けている(省略している)のが現状です。日本は狂犬病フリー国ですので、RIGは製造を行っておらず、通常は入手できません。人の血液を採取して、そこから抗体を分離した血液製剤であり、大量生産はできず品薄で高価です。
そのため、狂犬病動物に咬まれた可能性がある場合は、必ず、現地の首都圏の大きな病院を受診して加療を受けてから帰国してください。
RIGはヒト血清由来の製品ですが、途上国で供給されるRIGはウマ血清由来であることもあります。ウマ由来のRIGの投与は血清病のリスクも伴います。
1.2mlあたりおよそ300ドルで、6本投与されます。
最在国内にRIGがない場合は、隣国に緊急搬送して投与することになります。(この費用はカード付帯の旅行傷害保険では適応され無いことが多く、専用の海外旅行傷害保険に入っておく必要があります。)
当院では、各国で広く承認されている”VERORAB”ワクチンを輸入しております。未承認ワクチンについてはこちらをご覧ください。
ワクチンの種類 | 狂犬病 |
商品名 | VERORAB |
生産 | 輸入 |
販売元 | Sanofi |
基礎接種回数** | 3回 (0、7日後、21〜28日後) |
軽度の副反応* | 軽症の局所の痛み、紅斑、腫脹及び掻痒、時に全身反応(不快感、全身性の痛みと頭痛) |
重篤な副反応* | アレルギー反応(アナフィラキシー症状等)頻度;極めて稀 |
接種禁忌者* | ゼラチン、卵白、アンホテリシンB、クロルテトラサイクリン、ネオマイシンのアレルギーがある人 |
2019年3月26日にグラクソ・スミスクライン株式会社が狂犬病ワクチン「ラビピュール筋注用」の国内承認を取得しておりますが、流通量の関係で当院では輸入のワクチンをご案内しております。
*)掲載内容は全てではありません。
**)3回目の接種時期は、初回日から計算した日数です。
狂犬病ワクチンを3回または2回接種する(3回推奨)
狂犬病の暴露前接種を受けていない場合
皮内接種 | 2 箇所 0 日、3 日、7 日の 3 回 |
筋肉内接種 | 1 箇所 0 日、3 日、7 日、14~28 日の 4 回 2 箇所 0 日、 1 箇所 7 日、21 日の 3 回 |
狂犬病の暴露前接種を受けている または 以前に狂犬病の暴露後接種を受けたことがある場合
免疫グロブリン(RIG) | 接種は必要なし |
皮内接種 | 2 箇所に 0 日、7 日の 2 回 |
筋肉内接種 | 1 箇所に 0 日、7 日の 2 回 |
皮内接種 | 2 箇所に 0 日、7 日の 2 回 |
筋肉内接種 | 1 箇所に 0 日、7 日の 2 回 |
海外渡航において、現地のドクターが WHO 勧告の更新を知らない場合もあります。
むやみに動物に近づかないようにし、噛まれないことが一番ですが、もし噛まれて現地で医療行為を受ける場合は、WHO の文書を参考までに現地のドクターにお渡しください。
海外には海外の事情があり、必ずしもこの方法で行われるとは限りません。現地のドクターの指示に従ってください。
日本で生活する上では気にすることのない感染症。しかし、上・下水道施設が整備されて、非常に衛生的できれいな日本にはない感染症が世界にはたくさんあります。日本国内にはない感染症ですから、その感染症に対して無防備な状態で現地に飛び込んでしまったら、どうなるでしょう?感染症には軽症ですむものから重症化し入院や時にはあなたの命にまで危険が及ぶ怖い感染症もあります。健康である方も感染症にはかかります。
ワクチン接種を行うことによって、体の中に抗体(免疫)を付けてから現地に赴くことやワクチン開発のない(または開発中の)感染症からどのように身を守るかが大変重要です。
海外生活をより楽しくそして安全に過ごしていただくために、品川イーストクリニックではトラベル外来を実施しております。
海外で行われている予防医学学会へ積極的に出席することで、海外の医師との意見交流を行い、お越し頂く患者様へ的確なアドバイスを行っております。ご自身の身を守ることはもちろん、周囲への二次的感染予防としても、海外へご出発される前にしっかりと知識を見につけ、可能な限りの予防対策を行い、安全で楽しい滞在を願っております。
当クリニックでは、コンシェルジュ(看護師)によるカウンセリングや感染症専門医師による診察を行っております。
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